スタジオ講義

というものが組まれていることがひとつの特徴である今回のスタジオ。全2回で、今回はその1回目。
今日のテーマは『壁と開口の釣り合い(関係)』(''Das Verhaltnis von Wand und Offnung'')。これがアツい。


去年のセミナー旅行で撮ったと思われるミラノの建築作品を中心に、
パラーディオ、アルベルティ、ブルネレスキ、ミース、ライト、レベレンツ、オルジアティ父、フレットンといったさまざまな時代のさまざまな巨匠たちの作品を2つずつ並べて、
ファサード、壁、そしてそれらに対する開口の量をテーマにメルクリが講義していくという形式。
その二項対立なシンプルさが非常に分かりやすい。
彼はギリシャ・ローマ建築やオーダー、軒や窓といった建築言語から、ときにジャコメッティや絵画までを駆使してそれらを語る。
建築言語の意味の話を中心に建築の尊さを滔々と説きつつその一方で、突然建築哲学の話をし始めたかと思いきや今度は建築というものに個人の手が加わることの重要性もまた強調し、
ファサードを観察し、そしてそこに生まれる個人的な感情を大切にせよ」といった(ような)ことばで学生を鼓舞する。
というか、メルクリの本当の主張はあくまでこの部分なのではないかとも思う。
つまりは建築の建築性というものがいかに人々に解釈され、いかに人々の生活を豊かにするのかということを自分のなかで問い続けよ、
その発端として過去の建築を観察し、自分がいかに思うのかということを考えよ、
ということ。
そんなことを示すように最後に自分だったらこうするといったことを述べたのち、君たちならどうするかと問いかけてぼくたちに宿題を残す。
これがひたすらに4時間。だがどれも興味深い話の連続でその時間はほんのひととき。


おもしろかったのはやはり師匠のオルジアティの建築に対する観察。
こないだ見たFLIMSのホテルを取り上げ、あの太い柱やアーチについて、また彼とコルビュジェの関係について他の建築に対してよりさらに熱っぽく語る。
太い柱はアンティークな表現を用いることでローカリティをつくり出し、
その端部につくられた影はエンジニアリングの問題とイオニア式の柱頭(のつくる影)を想像させ、
そしてあのアーチはパラーディオの正円アーチをおしつぶすことで家の小ささを表現しているんだ、なんだそう。
ぼくは何を思うのか、考えてみなければ。


そんなことを思いながら、そろそろ設計開始。


これがその柱と端部にできるスリット、あなたは何を思うか。建築ってのはそういうことを考える学問ていう根幹を再確認。