ラストデイ

インベルリン。はやくも1週間が過ぎてしまった。
夜行列車までまだまだ時間はあるので、
HAMBURGER BAHNHOF-MUSEUM FUR GEGENWART-BERLIN でこの旅を締めることにする。


構えがあまり駅舎っぽくなくて油断して入ると、
真っ白な空間に駅舎であったろうことを示すトラス梁が連続した大きな空間がいきなり現れる。
だがここではただそれに気づくだけ、ひそひそと常設展の方から巡っていく。
すると、今度はボールト屋根の高い空間にAndy Warholの絵が飾られた部屋に出くわす。


これがいい。
ケレツのワルシャワのコンペ案を思い起こすようなボールト屋根のトップにつくられたラチス状の透かし窓から
真っ白の光が差し込んできて、それだけで現代美術館としての意味を発しているように感じる。
(それほどにこれまで見てきた美術館では人工照明の暗い部屋が多かったと気づく)
21世紀美術館を惚れ込み過ぎなせいか、何かこの自然の光を浴びるだけで急にアートと近づけた気になる。
同じ光を浴びているというか、やっとアートと対等な気になれる感覚。
そんなことを考えながら進んでいくと突如、アーチ窓を通して、さっきのメインの空間を横から体験させられることになる。


これがまたいい。
今いる空間よりももっと明るい空間が、アーチ窓から限定して見えることで、無限の大きさを持っているかのように感じられるのだ。
そして、わずかにさっきのトラス梁が見えることで、その空間がどこなのかと、スケール感とだけが認識される。
これと似た体験を、ぼくは青木淳の G でしたことがある。
ガレージのシャッターも閉められたそのわずかしかないスキマから見えるエントランスのガラス越しに、
なにかまるでその先が外部であるかのような非常に明るい空間が広がっているのが捉えられる。
外のように見えることが無限の広がりをぼくに想像させる。
建築における光というものについて、はじめて考えさせられたときである。


さらに進む。特別展、''WOLFGANG TILLMANS. LIGHTER'' 。


これがまたまたいい。
改修の一部なのか、またはANNEX的につくられたのか、またまたJosef P. Kleihuesがやったのか、
駅の倉庫を模したような細長い空間を行って帰るだけの展示室に、まさに写真がちりばめられている。
写真自体の奔放さと、
額縁もなく、まるで学生が部屋に貼るみたいにランダムに貼られたその展示と、
そしてデッキプレートがむき出しにされた無造作な空間とが、見事に心地よい関係をつくっている。
光じゃなく、今度は空調とか蛍光灯とか、そんな既製品でつくられた建築のエレメントがぼくをアートにひきよせる。
太いブレースの脇の余ったような空間に飾られた after party という作品に感銘。
シンジュクでもやってたみたいだが、最近見たアートの中ではダントツに楽しかった。


いいもの見たなといい気分で早めの夕食をすませ、お世話になったマリオ&ラファエルにグッバイ。
出ずっぱりだったから本当に何も話せなかったけどいい家族だった。感謝の棒茶を手渡す。


いろいろ新しいものも見たけど、前の旅を振り返るような感もあったBERLIN。
いろんなことが絡んで、見え方も、見えるものも、食べるものとかも変わるのだということを深々と実感。
BERLINをそんな定点にしようと勝手に位置づける。


まだまだ何度も来ると誓う。


世話になった、U9。ベルリンは電車までもナイス。


※明るい空間