1枚の絵葉書

がぼくのピカソとの初めての出会いである。
それから4年くらい月日が経ったろうか今回のスペイン旅行、にて、その葉書に描かれていた作品を表紙にしたピカソの作品集を手に入れることができる。
それが、鳥肌ものの内容なのである。


数学が苦手ではあるが完全に理系の道を歩んできて、美術史なんて全く勉強しなかった私めがピカソを語るなんておこがますぎることではありますが、
その圧倒的な才能による、誰もがひきつけられるであろうモノ自体の良さ(ゲイジツ知らないぼくでも分かるくらい、とにかく絵がむっちゃくちゃうまい)、
ギネス公認の万単位に及ぶ多作さ、
その多作さを退屈にさせない溢れ出る多彩さ、
そしてその多彩さを人生という長いスパンの過程において、しかも幼少期から最晩年にいたるまで表現し尽くした、その人生そのもの、
そんなことごと、それゆえそれぞれの作品ひとつひとつが密実に絡み合って関係し合っているという点で、
まだまだ足らずとも一ものづくりに携る者として憧れてしまいます。
そのくらい魂込めて、かつ限りなく地で人生デザインしたいもの。ピカソの絵を見るとそんな勇気をいつももらう。


''PICASSO CHALLENGING THE PAST''と題されたまだ出たばかりらしいこの作品集は、
2月までパリにて、そして現在ロンドンにて行われている同タイトルの企画展の図録として発売されたものであり、その内容はと言うとこれが、
''ピカソによる巨匠の『参照』''の検証、というものである。
古典を『参照』する建築家のひとりであるメルクリ課題をやってる最中であり、さらには
最近啓さんとコンペでもやろうかと、''建築における『参照』とデフォーメーション''てなことばかり議論していたぼくにとってはまさにタイムリーすぎるこのテーマ。
ゴヤ、エルグレコなんていうプラド美術館で走り去るように見た巨匠たちの作品と、それを参照して描かれたろうピカソの絵が、
見開きA3で次から次へと紹介される刺激的な構成だけでもう鼻水が出てしまうくらい。
冬のイタリア旅行を経てゆえのバルセロナプラド美術館で感じた「芸術なんて参照でしかない」、そんな思いがピカソにまで接続してしまった瞬間である。
これは建築も同じ、以前も書かせて頂きましたが、
''建築家はなにも想像しない。ただ現実を変形するのみ''、まさにそうなんすよ。これなんすよ。
つまるところ''芸術としての建築''という枠組みに興味があると言ってもよい。


まだパラパラとしか眺めてはいないがさらにピカソを好きになるであろう1冊との出会い。
にしてもそんな感動的な出会いを演出する1枚を4年も前に手にとったセンスにはかないませんやんか。


人生の1冊てのは間違いなくある。ぜひ見にカモン。