みなさん

寝不足が明らかなISTANBUL1日目。しかし今日は歩きます。


トルコはとにかくモスク。それをひたすら見まくる。
というか、数分歩いただけでこれでもかというくらいどんどん目に入ってくる。
そのもこもこした外形も相まって、それはほぼもうISTANBULの地形みたいなものと化していて、決定的に都市の構造を形作ってるよう。
建築が地形に見えてくると、もうそこは都市のような印象を受ける気もする。
そんなモスク祭り第一弾はやはり代表格の HAGIA SOPHIA(AYA SOPHIA) から。


ほぼロボット、というかk先輩の言う通りザクである。くすんだ赤色が朽ち果てた巨神兵ってイメージも喚起させる。
力強いバットレスとかファサードのへこみとか、もちろんその彩色が残っていることとか、他のモスクより要素が多いのがスペシャルな感じ。
改修に次ぐ改修というのもうなづける。その力強いバットレスをくぐり中へ。
ヴォールト天井の細長い空間のワンクッションのあと、ばばーんと広がる大きな空間。
人が多いのもあったろうけど、想像以上に神聖ではなく、むしろ躍動的な感じを受ける。そしてアーチの連続がことごとくかわいい。
球の集合ということで幾何学的な印象の強い、理性的で静的な厳格さを持っているのかと思いきや、
''曲げ''というものの身体感覚に訴えかける部分のほうが強くでている感じである。というかところどころで歪んできているアーチ。
そして、内部空間でも発揮されている圧倒的な量の要素の集合。完全にぼくはこちら側の人間。
アーチやドームという建築の構造をつくっている要素が柔らかいものであるのとは対照的に、柱に象られた装飾やニッチのデザインがソリッドなのがクール。
側廊部分こそ非常に厳格な空間になっており、キュッと心が引き締められる。対比がグー。
ギャラリーに転用されている2Fへの道中がピンクレンガで囲われた薄暗いスロープ空間になっているのだが、これが胎道を思わせる官能的な空間でガラッとまた気分が変わる。
見上げとはまた違う角度でこのドームを体験できるのもなかなかよい。


ネクスト、 BASILICA CISTERN 。東ローマ帝国時代の大貯水槽。
構えがないことで、急に目の当たりにするドラマチックな空間にみんな驚く。何本もの神殿ばりに品格ある柱が水の上に浮かんでいる、見たことない空間。
そういえばMETEORAもそうだったが、007に出てくるので知ってる人は知ってるだろう。
交差ヴォールトの間に走るスラストを抑えるスティールが暗がりのなか浮かんでるようでかっこよい。
よく見るとところどころになんの装飾もないそっけない柱があったり、メデューサ像のこめかみに柱が突き刺さっていたりしていたのだが、
あとで調べてみると在庫処理的な意味合いが強かったらしい(Wikipediaによる)。
この空間もピンク。METEORAあたりからこのピンクレンガがかなり気になる存在。


昼食に楽しみにしていた本場ケバブ(ドネル)はベルリンのほうが全然おいしくてがーんな気分改め、次は SULTANAHMET CAMII(BLUE MOSQUE) 。
HAGIA SOPHIAもそうだったが、シンメトリーの正面性の強い建築にも関わらずアプローチが横からなのは単なる現代的諸事情によるものか。
ということでまずは側面に走るかわいいロッジアが目に入る。4層構成で非常にリズミカル。
どんどん近づいていくとなんとロッジア部分の天井が赤色、くーっ。信者の方々はこの空間で足を洗ったりなど身を清める。
そして中庭へ。
...もー、ちょーかーくいー。さすが世界一の美しさと評されるモスク。
その建築言語のもつ水平性に加え、1スパンごとにドームを持ちかつ微妙に尖頭アーチになることで垂直性も兼ね備えた心地よいロッジアがぐるりと回り、
その中心に再び身を清めるための小さなほこら(?)がささやかに建つ。
そしてその後ろにどーん、もこもこもこっ!と本体が構え、花火が上がったみたいに6本の塔''ミナレット''が伸びていく。
もう絶妙なトウ・ドウ・ロウのコンビネーションで、垂直性、広がり、水平性、その他もろもろのどの空間体験も見事に同時に体験できている、
まさに体の至るところの毛穴が開いてどの向きにも解放系になってしまったかのような、そんな不思議な感覚。
そんな豊かな空間体験はできるが比較的クールな外観とは対照的に、内部は隅々にまで美しいタイルが敷き詰められたゴージャスな空間。
愛称にもなっているタイルのブルーが本当にキレイで、差し色としてところどころに入るゴールドとの相性もケバくなくよい。
ここで去年の窓調査でお世話になったモスク窓にもご対面。想像以上に大きく感じる。
人がすっぽり納まるくらいの大きさのへこんだ窓で、主に女性のためのお祈りのための空間。
HAGIA SOPHIAほどの力強さはないが、ドームはより複雑でラビリンスな感じ。


まだまだ行きます、次はボスポラス海峡を横目に SULEYMANIYE CAMII 。が、残念ながら現在壁面補修工事中で外観しか見れず。
トルコ史上最高の建築家ミマール・スィナンによる、ISTANBULで最も大きいモスクである。
ちなみに彼の名前のミマールとは「建築家」の意。
モスク特有のもこもことした山のような外形が丘の上に建っているさまは一段と地形的で雄大
この建築のなんといってもおもしろいところは複合施設であるということだと思う。
そのためいちばん大きな、黒い威厳あるドームが、どんどん細分化されて最終的には小さなドームの列が末端に広がり、それがうまく街のなかに溶け込んでいるのだ。
HAGIA SOPHIAと比べるとその細分化の統合のされ方が実によい。屋根冥利に尽きる(*関連:2008-09-09の屋根の話)
こうした細分化はモスクならではか、同様に大きなアーチのへこみのなかにアーチの窓を入れ込むというような細分化も見られ、
実にリズミカルなタイポロジーに見えてくるのがおもしろい。
それにしてもこれだけ巨大な建築がたった7年でできたことには驚きである。さすがオスマン帝国
本体はほんとにわずかしか見れず、足下の墓廟などだけしばし覗く。


そろそろ暗がり始めたISTANBUL、また来るからということで GRAND BAZAAR を足早にすり抜け、
ガールズお待ちかねのハマム、つまりトルコ式風呂、つまりアカスリ公衆浴場のなかでも歴史ある CEMBERLITAS HAMAM へゴー。これもスィナン設計。
いまいち状況のつかめぬままお金を払って男女に分かれ、まずは矩形の4層吹き抜けに面して並んだ2畳半くらいの部屋にそれぞれ3人ずつつめこまれる。
タオルと草履を渡され、どうやらここで着替えるらしい。
赤いなかなかオサレなタオルを腰に巻き、いざ風呂場へと向かう。
スーパー銭湯みたいにいろんなタイプの風呂につかれるイメージを勝手に持っていたが全然そんなんじゃなくて、
これまたドーム空間の下に円形の石張りの基壇があって、その周りを小さな小部屋の洗い場が取り囲んでいるだけのシンプルな空間。
湯船などはなく、もうその空間自体がサウナのようになっていてむあっという空気に包まれる。
ドームの天井には小さな穴がいくつも開けられていてそこから青白い光が差し込むのだが、それが立ち籠める水蒸気と相まってかなり神々しい。
が、下で繰り広げられているのは、その基壇に寝っ転がった男たちが次から次へと泡まみれにされ、人形のごとく腕なり足なりを振り回され、
それ痛いだろというマッサージに悶絶し、最後には水を頭からぶっかけられるという修行のような光景。
そして、タオルでぐるぐる巻きにされ呆然と出てくる男たちの、まるで赤ん坊のような姿。確実にみんな朝より若返っている。
生まれ変わった気分で最初の吹き抜け空間で飲む風呂上がりの牛乳ならぬオレンジジュースまたはイチジクジュースがうまい。
再度まじまじと見るこの空間、千と千尋の神隠しに出てくる湯屋みたいだ。


長い一日でアシスタントも疲れたのかその後は見捨てられ、何グループかに分かれてのディナー。
散々お店を吟味しディスカウントの約束まで取り付けといてなぜかパスタを頼む女子たちを横目に食べるシシケバブがこれまたうまい。


トルコビールも飲んで眠さ限界、ホテルに着くなり意識失う。


ピンクザク、HAGIA SOPHIA入り口。バットレス力強すぎ。

珍しいので2Fより。工事中でなかなか空間の激しさが増してる。こいつはホントに丸っこい印象。

大貯水槽。これがインフラなんて贅沢すぎるが、昨今の土木好き建築くんとは一線を画す感じが新鮮。

ケバブを食べてるときに近寄ってきた猫。ギリシャでたくさん見た野犬に比べ、トルコでよく見る野良猫はかわいい。

BLUE MOSQUEのロッジア。トルコ建築は遊びがある感じがよい。小粋。

HAGIA SOPHIAやスィナンの実直さ・パワフルさに比べこちらは軽やかで華やか。言うなれば最も建築している。

美しすぎるので別角度よりもいっちょ。ロッジアのつくる影とか、きっと一日中いても飽きないと思う。

中もまたお美しい。幾何学でこれだけの複雑性と美を創り出せることをフロリアンしばし強調vsフリーフォーム建築。

改修中のSULEYMANIYE CAMII。大きく張り出した庇はトルコ建築の重要な要素であることに気づく一日でもあった。

たぶんSULEYMANIYE CAMII内のどこかの内部。迷ったあげくだったので定かでないです。小ぶり。


※かたの反復と全体性