熟睡

そして少しばかり寝坊のISTANBUL2日目。国境を乗り越えたときの疲れもふっとぶ快眠。


今日も朝から徒歩移動、そして辿り着いた TOPKAPI PALACE 。快晴の朝には気持ちよすぎる緑々しい庭を抜け、さっそく HAREM へ。
この宮殿は言うなれば街のような、小さな建物が密集して内部と外部が不意に移ろいゆくそんな空間。
廊空間が秀逸で、どこも非常に天高が高く、また小さな穴がたくさん穿たれたトップライトが必ずあり、ほぼ外部空間のような気持ちよさ。
アーチ状のへっこみやベンチなど、ふと腰掛けられる場所があるのも一段と街的である。
小さな部屋ほどトップライトなどにより白く明るく、また大きな部屋ほど光が抑えられタイルなどの彩色がじわっと染み出るよう。
昨日も見たモスク窓がここでもたくさん登場。
今度は造り付けのソファと一緒になり、またそれぞれに小さな洗面台もついていることで生活を少しばかり感じる。
朝の静けさのなか、少しばかり宮殿の住人となって家をうろつくような感覚を味わえたのが楽しい。


その後は宮殿内を2時間ばかしのゆったりフリータイム。
分棟形式でゆるやかにつながれた建ち方といい、モスク窓×ソファに代表される内部のつくり方といい、
今の時代でも本当にいい生活ができそうなのがどこもかしこも印象的である。
今レストランになってるあたりはばーんと海が一望できて、あとからつくったのかもしれないが建物自体のつくりもかなりオサレでかっこよい。
長谷川逸子の熊本の住宅を彷彿とさせる屋根が印象的な大きな調理場では、同じようなドームの屋根なのにレンガあらわしで煙突がついてるだけで、
急にざっくりとしたいかにも機能主義的なあっけらかんとした雰囲気も味わえる。必見。
またどの窓も壁が厚いからか、ステンドグラスと透かし窓というようにダブルスキンになっているのも先進的でクール。


昼食はガラタ橋のたもとであり得ないくらい揺れる船のなかで調理されたフィッシュケバブ、要はサバサンドをつまみ、
フリータイムがちょっとだけ残ってたので近くの EGYPTIAN BAZAAR 、別名スパイスマーケットに行くことに。
生魚と衣服が近接する感じがなんともアメ横的で、ISTANBULのアジア的部分を垣間見る重要スポットだと思う。
スパイス屋につられた名づけてパプリカネックレスがかわいい(ほんとのネックレスではありません)。


そしてお待ちかね、内心楽しみにしていたイベントであるボスポラスボートツアーに。
30分くらいのものかと思ってたらしっかり1時間半くらいの長い長いクルージング。
ドームとミナレットのつくる独特のスカイラインに最初は感動するもこれが寒い寒い。顔面凍ってくる。
それでもヨーロッパ側とアジア側でこれだけも雰囲気が違うものかというのが実感できておもしろい。アジア側のちょいダサ加減になんかソウルを思い出す。
2Fのデッキにずっといたのだが最後のほうで1Fに移動したところ、こちらのほうがスピード感があって楽しいやんという感じ。
お乗りの際はぜひ1Fをおすすめします。


身も冷え冷えになった夕暮れ、アジア側に移り向かった先は ISTANBUL MUSEUM OF MODERN ART 。
ここに来てモダンアートを見るという、少し肩透かし的なお立ち寄り。
港に工場的な建物で、というのはかなりおもしろいんだがちょっとばかし照明が気に入らない。現代アートに暖色系の照明がダメっていうのはぼくだけでしょうか。
が、展示してあるものはなかなか興味深いものばかり。
完全に名前を忘れてしまったが、特に地下でやっていた映像作品で、ひとつの部屋にいろんな人のアクティビティのレイヤーが重ねられたやつがおもしろい。
小さな空間で隣を気にせずいろんなことが発生するさまは現代的でどことなくトーキョー的。
あとは、長方形の空間を斜めに横断するように、壁とふたつの開口のようなものを糸を使って表現した作品がかなりキレキレで、
目に見えない壁がしっかりと浮かび上がっていたのには少し感動。


その後も新市街をうろうろ。
あまり観光地化されておらず、市民の生活感がより感じ取れるこのエリアで見るトルコ特有の出窓がなおもよい。
かなり密々に、間口の狭い中高層のビルが、しかも高さもまちまちで建つその姿が東京と重なるようにも思う。坂が多いのもその一因かもしれない。
30分ほどの散策後、超高層の高級ホテルの最上階のバーでのアペロ(食事の前の一杯)。
セミナー最終夜のこのアペロはいつもアシスタントのおごりだ」という誰かの囁きのもと、1杯15トルコリラ(1000円くらい)のビールを2杯ばかし飲むもののなんと自腹。
トルコの少しばかり物足りない夜景にはちと高すぎたかもしれないがまぁ仕方がない。


そしてこれまた立派なレンガのヴォールト天井のとあるレストランの地下空間にて本番の全員参加のディナー。
もうさっきのビールで気が大きくなって「時価」と書いてあるジャンボシュリンプを頼んでみる。
こんなふうにごはんで全員揃ったときはなかなかぼくの周りは大変で、
まずスイス人とぼくは基本的に英語で会話するのだが、唯一日本語のできる韓国人のコは気を使ってぼくに日本語で話しかけてくれて、
その韓国人のコはもう1人の韓国人としゃべるときは韓国語で話し、そのもう一人の韓国人のコ及び同じスタジオの中国人のコとぼくは英語で話し、
その中国人のコと韓国人2人組はドイツ語で話し、そのぼくを除いたアジアングループとスイス人はドイツ語で会話するという、
かなり頭が疲れる言語的スクランブルが発生してしまう。
ぼくがドイツ語話せれば一気に解決されるであろうってところにかなり危機感。
クロアチア生まれのフロリアンの上司クロノもドイツ語が苦手というのが実はこの旅唯一の救いでもあった(ということでガイドは英語)。
名前も外国人には長くて覚えにくいらしく、あげくの果てに気づくとフロリアンからは響きが似てるだけで''カワサキ''(某重機メーカー)と呼ばれている。
ちなみにクロノには''トヨオイトー''。なんでもいいんかい。
そんな外国生活の壁に少し気を落としていると爆音とともにそんな気分をとっぱらうベリーダンス開始。
黄色いビキニみたいな衣装をまとった化粧の濃いねーちゃんが急に我らがディナーを楽しむテーブルの上にあがり踊り始める。
爆笑とドン引き半々の女子たちお構いなしに、男子ひとりひとりから5トルコリラずつブラに抱えしっかり持ってくねーちゃん。まさに嵐のような一瞬のできごと。
そんな楽しいひとときも終焉、お勘定タイム。
金なしアシスタントが割り勘を要求をしたのはいいのだが、予想以上に高い請求に「そんな食べてない」とスイスガールズが猛抗議。
「ワイン代は払うから」というアシスタントの譲歩(?)の甲斐もなく、結局メニューを引っ張り出し自分の頼んだものは自分で払う方式に。
「なんてめんどくさいんだスイス式勘定は」と心のなかで思っていたがいざ自分の番になりびっくり、シュリンプが他の方の3倍くらいの額じゃあないか、ははは。
同じく頼んだ韓国人のコのちょーガッカリした顔を横目に、ジャパニズムスタイルで何事もなかったかのようににこやかに支払って切り抜ける。


それにしても想像以上にお金にシビアなんだなスイス人なんて思いながら、事故ったら死ぬであろうトルコの高速タクシーに揺られ帰路。
怖いながらも、ライトアップされたローマ帝国時代の水道橋 VALENS AQUEDUCT をすり抜ける感じが、酔い覚ましにはなかなかよい。


いきなしHAREM内部。これがモスク窓(名前は適当です)。限りない装飾空間がとてつもなく心地よい。

オサレトップライト。こういうハニカム型のトップライトが至るところにある。

廊空間、あくまで内部です。こういうアーチのミニブリッジも好き。

トプカプのレストラン。窓といい、上に溶けてくアーチのラインといい、なんとなくゲーリーチック。

ボートより。いちばん高いのが昨日のSULEYMANIYE CAMII。この風景選ぶRed Bull(Air Race)えらい。

新市街。圧縮されてる感じがトーキョー的でアジア的。建物はヨーロッパ的なんだけど。そこがおもしろい。

ISTANBULの夜景。新市街だからか思った以上に広がらない電飾。反面きれいな空が映える。

ブレブレですがせっかくの思い出の1枚なので。踊るねーちゃんとそれを見上げるアシスタント、クロノ。