決戦

前日。
長いようで短かったスタジオも明日でついに終焉。ケレツとの対話もこれが最後になる。
図面、モデルとも満足というものはまだまだだがとりあえず後悔はない。
あとは熱をこめて英語で語るだけ。
とその前に、今日は他のところでもやっている最終クリティークをちらほら拝見。


建築棟1F、ミラマランタ、ジゴンゴヤのゲストゾーンはどうも課題がいまいちなのか学生がまばらなせいか、どこか熱気のこもってないブースになっている。
ジゴンゴヤスタジオの作品がどれも横長のプロポーションのジゴンゴヤ窓になってるのがあまり好ましくない。
それ以外はゴヤの長身だけがただただ衝撃的。


2Fのほうがスタジオが多いこともありかなりの熱気。まずマテオ、クラウスが階段の前に並ぶ。
唯一の英語のスタジオであるマテオはアジア系の学生が目立ち、プログラムが美術館ということもあってかなり自由な感じ。
CGを駆使しファサードに凝った案が多い。
それに対しクラウスはストリートハウスというテーマで、でかいスケールの細長模型が机の上にずらっと並んでいる。
みんながスケールを統一することで、その風景が勝手に街並的になっているような感じでグー。
内部はそれなりによさげなのだけれどこれがマテオとは逆にファサードが全然な案が多かったのが課題が課題だけに残念。
その奥では少数精鋭的に取り組むカミナダスタジオがひっそりクリティークをやっている。
模型、図面とも想像以上に表現的で、泥臭い感じの独特の土着的なプレゼンテーション。
あまり内容を見ることができなかったのが惜しい。


その向かい、ひと際熱のこもったスタジオとなっていたのがマルケス
コンテクストバリバリの課題のおもしろさに加え、ゲストとしてメルクリが来てたことが大きな要因に違いない。
髪をかきあげ、自分の意見をダイレクトに伝え、あとはもう他の図面をちらちら見て別のことを考え始めているような独特のクリティークがみんなに愛されているらしい。
ほとんど内容は汲み取れなかったが、日本での講演で感じた熱のあるしゃべりは健在。
カミナダ、マルケスとも最終的な成果物は決して派手なものではないが、プロセスが色濃く見えるプレゼンテーションに仕上がっている。
みながあるレベルに到達しているという印象。


そして2大CGスタジオであるコルホフ&シク。どちらも見応えが抜群のA0CGパースがずらずら。
ホントにふつうの、何でもない建物を外観から内部に至るまでハイクオリティーなCGで描くコルホフスタジオの作品は想像以上にパワフルで、
ヨーロッパという土壌における何でもない建物の必然性を強く訴えてくる。
ヨーロッパの強固な都市構造のなかに建っていてもきっと見劣りしないレベルにまで建物ができているように感じるのは、
やはりパラーディオやシンケルが再解釈してきた建築の言語をしっかり吸収しているからであろう。
それに対しシクのほうはオープンエアシアターというテーマも手伝ってCG版ケレツスタジオとでもいうべき予想外の自由な造形。
コルホフスタジオにも引けをとらないCGを、こちらはみな独学で習得してるっていうからすごい。
両スタジオから読み取れるETHにおけるCGスタジオの特徴は、
アメリカ的・アンビルト的な、いかにも模型ではつくることのできない造形をつくるものとしてCGを使うのではなく、
建ったときにどう見えるか、どのように敷地と折り合いをつけているのか、どんなシーンをつくることができるのかということを、
「ほぼ実際に」検証するものとしてCGを使っているように見える。
こないだ出たオルジアティの作品集の、本物か偽物か分からないほどのハイクオリティーなCGもきっとこの流れであろう。


それに対するかたちですごかったのが我らがケレツスタジオのとなりでやってたカルゾ&Stジョン。
彫刻家Thomas DEMANDバリ(さすがに言い過ぎ)の、本物と見紛うごとき内観模型写真がかなり衝撃的。
建築そのものから家具に至るまで、色、質感、材質をかなりの精度で再現している。どうやってつくるんだこんなの。
その模型が実際に並ぶことはなくて、1/100くらいの外観用の全体模型と図面が並ぶのだが、
図面も濃く、またリノベ課題なのもあってか断面図が非常に充実していておもしろい。
このスタジオもまた全体としてレベルが高い。今回一番充実してるのはここだろうか。


明日のクリティークを前にかなりよい刺激をゲット。
おまけに今日だけのゲストに来てたHOSOYA SCHAEFER ArchitectsのSCHAEFER氏(元AMOらしい)がぼくの模型を気に入ったらしく、
「話がしたい」と特別に個人クリティークもしてくれたおかげで自信もアップ。氏曰く「Cool sculpture.」とのこと。


ということで、待ってろ、ケレツ。


クリティーク祭り開催。ホワイエと吹き抜けがやけに多い建築棟が花開くとき。

クラウス。いわゆるヨーロッパ版町家課題。もう少しきれいに並べれば類推的街並。

カミナダ。10人のみの最小限スタジオはクリティークも一瞬。

マルケス。メルクリが吠える。信者が多いこともあり、観客も一段と多いです。

コルホフ。大先生は新しくできた新築の建物のなかでのクリティーク。他と違って厳粛な空気感が漂う。

デプラツェスは学部1,2年生を対象とした課題を担当。ここで徹底的にETHイズムが継承される。

カルゾ&Stジョンの模型写真の写真。これはなかなか日本ではお目にかかれない代物。