イブです

ね。んなことお構いなしにまだまだ続く建築巡り。
充実のポルトガル旅行を言わずもがなシザで締める。彼の出身校でもある FACULDADE DE ARQUItTECTURA DA UNIVERsSIDADE DO PORTO 。


PORTOの街の賑わいも静まったくらいのところで川を望むかのような数棟のヴォリュームで構成された贅沢なキャンパス。
ゆるやかな傾斜地のなか、川側には中層のボックスのヴォリュームが間隔をあけて並び、山側には大きく長いヴォリュームが寝そべるようにして建っている。
クリスマスイブで誰もいないことを差し引いても、非常に静かで落ち着いた空気が漂っていて、
その他の作品と同様窓の少ない立面に囲われるということがそんな雰囲気をつくっているように思う。
ここまで見てきて気づくのは、シザは明らかに壁の面積に対して開口の面積が少ない。
立面がツラでつくられることも多いことから余計にその印象は強くなり、ときにものすごく閉鎖的でモニュメンタルに見えるときがある。
それでも立面が雄弁なのがシザの特徴な気もしていたが、この建築は反してなかなか寡黙。教会に近いか。
川側の4棟は顔は微妙に違えどまさにそんな感じで、プロポーションも相まって建ち方はまさに墓石のごとしだ。


が、いつものように中に入ればその期待は裏切られる。イブなのに働いてくれてた警備員オブリガード。
とにかく明るいのだ。そこでもやはり効いてくるのは横長の窓。
東工大やETHとは違いひとつひとつ小さな製図室の一面いっぱいに開けられたその窓が立面からは想像できないくらいの明るい空間をつくる。
何度も言うようだがポルトガルの日差しはほんとに質が違うんだろう。
ぼくの日本で経験してきた窓の大きさと空間の明るさの関係に対する認識、その認識がつくる異国で建てられた建築の立面に対する誤読、
そのズレがこの空間を異常に明るいものとして捉えさせているともいえるかもしれない。
つまりそのくらいシザはポルトガルの太陽と呼応している建築をつくっているのだ。
このようにことごとく的確に窓があてがわれていく内部空間は、それが的確すぎるゆえまるで立面を内部において理解していくような体験を生む。
これは当たり前のようで現代の建築には失われていることのように思う。
今見えていない表側を思い起こしながらその裏側にいるという感覚を生むこの体験は、まさに青木さんのあちら側とこちら側の話にも通ずるんじゃないか。
ベルリンのホロコーストのなみなみ地面と天井の関係もそんな感覚を生んでいだことをふと思い出す。
最も明るい空間は、足下に埋もれるようにして設けられた実は川側の4棟をつないでいる廊下で、
歪むことで微妙にパースを効かせながら3棟それぞれがつくるスキマに設けられた大開口からめいっぱいの光を吸い込んでいる。
その廊下がこれまた実は山側の大きな棟もつないでいて、こちらはシザらしい曲線ありスロープありの素晴らしきシーンの連続。
ひたすらに漂うことを許してくれるような大らかな動線体だ。
残念ながら敷地のいちばん奥に建つパビリオンには入れず。角に開けた部屋のような窓がナイス。


カサ・ダ・ムジカとアルヴァロ・シザの建築。
モダニズムを乗り越えたまさに現代の建築を代表する前者と、モダニズムを継承したうえでそれを、しかも最も建築らしい手法で洗練させていく後者。
この両者を行き来しその関係に没頭するだけで、非場所も地域も都市も建築も時間も世代も、建築のあらゆる世界に気づく気になってしまう。素晴らしいヒントの連続。
そんな両者が同時に存在するポルトガルは、建築に迷う者にたくさんの助言を与えてくれる、まさに建築を学ぶ者にとっての新たな聖地に違いないんじゃないか。
そして何よりこの物価の安さ。学生のみなさん、今ここが熱いです。


さて緊張のライアンエアー、イブの夜を目指しいざLONDON。入国審査を乗り越え空港を出た頃にはもう8時くらい。
クリスマスを過ごせないアジア人で賑わうユースに荷物を預け、さっそく人気の少ない夜の街へ繰り出す。
すると完全に甘く見てたLONDON。ハンパなくパワフルな街ではないか。
とにかく建物がでかい。
全体の大きさだけじゃなくて、パーツパーツの目鼻立ちがこれまで訪れた街とは段違いなのである。まさにシティだ。
なんちゃってシティボーイの血が久々に騒ぐ。
圧巻はOXFORD ST.とREGENT ST.の交差点。そこを円形の広場に変える、それぞれ1/4円のへこみを持った4つの角地建築。
角同士が対話し都市をつくるということはこういうことを言うんすかという瞬間。
建築ががっちがちの都市構造を浮かび上がらせている。


その後もかつての工業先進国がつくりだしたんであろうこの力強い構造に触れながらレストラン発見。イタリアンで静かにイブを祝う。


大学横並び。それぞれ微妙に顔が違うのが退屈にさせない。

顔接写。この建築の開口は特に内部から決められてるように思う。そのくらいそっけない。

製図室。水平連窓。明るい。

棟をつなぐ廊下。これまた明るい。そしておそらく歪んでいる。

全ての道は光に通ずる。

大きいほうの棟の2段スロープ。先の製図室の棟に対し非常にのびのび。

ギャラリー。左のヴォリュームは小さなホール。ここで講評会とかやっちゃうんだろう。

相変わらずいろんな光がある。天井についた板がシザらしい。

今ぼくがのってるのは床じゃなくて庇。スーパーキャンチ。

入れなかったパビリオン。住宅作品でも見られるでかすぎる角窓がむちゃくちゃ気持ち良さそう。

恐怖のライアンエアー

ロンドン角地。これで一気にロンドンが好きになってしまう。やっぱシティ派です。

CARNABY ST.がヒット。いかにも若者の通りっぽくて原宿とか思い出す。今度はここで買い物や。