5時起き

改め8時起きくらいのゆっくりとした朝でカミナダのホテルを堪能し、ついにグラウビュンデン旅行の最終目的地へ。
KIRCHE SOGN BENEDETG IN SUMVITG 、ズントー1989年の作。


最寄りの駅を下りて50分、なだらかな坂を登り続けてやっと辿り着くこの教会。
50分も登るんだからもっと孤高な感じでポツンと建っているのかと思いきや、登った先にある集落の奥にひっそりと隠れるように小さく小さく建っている。
鱗のような外装が想像以上に柔らかく、その上に開口を挟んで乗る葉っぱの屋根がさらに軽やかさを演出している外観。
そこからニュッと入り口がのび、招き入れられる3人。


すると、小さな建ち方、軽やかな外観に見合う、とてもシンプルな内部が広がる。
葉っぱ型の空間がこれまた柔らかで、何事もなくすっと受け入れてしまう。
そしてこの構成に対する何事もない容認によって、建築を体験するための色んな器官が解放されていく、のがなんとなく分かる。
まるで坂本建築のように、床壁が切り離され、天井を覆う木の葉の構造を支える柱も壁と切り離されている。
そういう宙ぶらりんの状態の空間に、天井と壁を切り離すスリット状の窓から明るい光が差し込む。
と、銀色に塗られた曲面の壁に、その光が踊るようにのびるところと、そうじゃないところができる。
そして、そのわずか手前でより輝く柱の面と、またそうじゃないところも認識される。
さらに今度は、その銀色の壁にのびる大きな光が、窓枠の細長い影と柱の太い影とによって分節されて、
さらによく見ればその小分けにされた光のなかに、明るい部分と少し暗い部分とがあるということが分かる。
そしてその意識をもって全体を再び眺めると、先の直接光の当たらない銀色の壁にぼうと柱の影が滲んでいたことに気づく。
こうして銀色の壁と、それとは切り離され少しだけ手前に建てられた木の柱という構成は、
その銀色の壁にこのようなさまざまな濃淡の影と光とを浮かび上がらせていて、
その壁と柱のわずか15cmほどの関係のなかにとてもとても分厚く、だがとても柔らかい空間をつくり出している。
そんなあまりにも奇跡的すぎて偶然的かとも思うこの空間を、間違いなく意識的につくっているズントー。
角柱の4面のうち壁に向いた1面だけを白く塗るという処理がそれを物語っている。


この非常に感覚的な空間の現象を、銀に塗られた「壁」や裏が白く塗られた「柱」といった建築の言語の範疇で実現するズントーの姿勢は、
建築の部位を介して学術的に現象を噛み砕き、またそれを再現するという、建築的思考のど真ん中がもつ魅力を体現しているんじゃなかろうか。
彼こそまさに建築家。


これにてスイス旅行第1弾が終了。
つづくイタリア旅行は曽我部さんお薦めの絵日記型でばしばし書こうかと思います。


ザッツ カミナダホテル。やはり窓がらしい。

印象的な階段をあがると。

朝飯も豪華です。ほんと旅の半分くらいは食に尽きる。

ポルトガルから始まる長旅で生まれる温度差、なんつって。

教会のお目見え。アプローチでは埋もれるような見え方。

角度を変えて。村を眺める教会の図。

ニュッと出るエントランス。お出迎え感がよい。

見上げてみる。薄い屋根がほんとに軽い。

昨日に続き、壁アップ。この地方ではよく見るこの外装。

入るとまずはこの風景が広がる。すぐさま理解される全体性。

反対側から見る。まさに葉っぱ。

エントランスにおける柱と壁の優劣。すべてがバラバラにそこにあるだけ。

そして影。これは是が非でも体験してください。

葉っぱのさきっちょ。

窓のようす。なかなかおもしろい開き方をするらしいが今回は見れず。

そして問題の柱の裏側の塗装。丁寧に先のエントランス部分では避けてあります。これが何とも言えない影のグラデーションをつくる。

最後はエントランスの反対側から見た外観。今度は急に2層分ほどの細長いプロポーションに。