あとは

好きにしてという最終日。ショッピングする者あり、寝たいだけ寝る者あり、もう一度敷地を見に行く者あり。
ぼくはどうしてもLA ROTONDAを見ときたい者である。


今日唯一の目的地、 VILLA ALMERICO CAPRA ''LA ROTONDA'' /1569。
言わずもがなパラーディオ最高傑作と名高いヴィッラである。
あまりにも有名な四面同一のファサードは一面は薔薇の咲くアプローチ、一面は迫り迫った林、そして残り二面は広大な畑という異なる環境に対峙していて、
形式と環境との良好な衝突を最もシンプルでかたちで示している。
その良好さは言わずもがなファサードを構成する大きなロッジアに担保されていて、それら環境と太陽の動きとさえあれば、
1日のいつも1年のどんなときも決して同じ時を過ごすことなく過ごすことができるんだろうという想像を可能にしている。
ロッジアが壁という言語から独立したこの瞬間に涙が出そうになる。


内部はLA MALCONTENTAを体験したあとでは小さく、それが円の求心性を強調する。
が、この円がつくり出した最も重要なものはこの求心性や光などではなく、その幾何学そのものだ。
中心を同じくして円が正方形に囲われ、その間に矩形の部屋がつくられるというこの構成は、
四面同一というエクステリアに対して限りなく真摯な回答をしつつもロッジアに面する部分で少しの差異を帯びる。
それは部屋のプロポーションの違いであり、それがつくる短い壁の有無だ。
たったそれだけのシンプルな違いによって、がしかしそれが限りなくシンプルであるがゆえによって、
ロッジアを通した先の環境の違いと相まって時間の偏りを持った複雑な空間が浮かび上がっている。


充実のコミュニケーション、これこそ建築なんじゃないか。
この感動を胸にLA CONGIUNTAを見ての解散なんて、素晴らしすぎるシメである。


堂々のファサードにまずは受け止められろ。

素晴らしき敷地には徹底的に対峙するのだ。

ロッジアはつくづくロッジアであれ。

そうすれば文化が時間を繋いでくれるはずだ。

だからこそ400年経ってもこんな建築ができる。